ミシシッピ川



船はミシシッピ川を下りメキシコ湾に向かう。右岸に目を向けると、ナインスウォードと呼ばれる地域が見える。ハリケーンカトリーナによって家の屋根は崩れ、青いシートで補修されている。石が散乱する川原で、一人の男が釣りをする。一方、左岸では、きれいな川原で家族が釣りを楽しむ。その向こうにはビル群が見える。

人種や貧富の差などアメリカという国を隔てるものは多いが、多分この国を最初に隔てたのはミシシッピ川だろう、なんてことを左右に流れる異なる景色を眺めながら、考えてみたりした。

ニューオリンズへ向かう飛行機の中、淡いキャンバスに茶色の絵の具で一筆書きしたようなミシシッピ川を眺めていた。隣に座っていたおばちゃんが上空から見える青いシートの意味するところを教えてくれた。彼女の実家はミシシッピ川と湖の真ん中の、低い地域にあったせいで、洪水で破壊されてしまったという。彼女の両親はなんとか水害を逃れたが、父親は1ヶ月後に亡くなったらしい。84歳の母親は今もニューオリンズで暮らしているという。「一緒にサンフランシスコで暮らしてくれるといいんだけど。」と言われ、私はいい言葉が見つからず、ただ頷いていた。「時間があったら、絶対に被害にあった地域を見に行きなさい」と言われ、間髪入れず「Sure」と答えた。一応、約束は果たしたつもり。