近代野球理論

「近代野球理論では、3番に一番打てるバッターを置くのが鉄則だから、野球部に入っていたN君が当然3番に入るべきだ。1番なんてあり得ない。」と、私が提示した打順にKさんが反論する。
何も社内の草ソフトボールに近代野球理論を持ち出すことも無かろうにと思うのだが、Kさんの近代野球理論への信頼は揺ぎ無い。
「N君に多く打席が回ってきたほうがいいじゃないですか。」と私。
「いや。近代野球理論では3番重視だ。」とKさん。
「一体どこで聞いたんですか、その情報は。」と私。
「何かのラジオで聞いたんだ。間違いない。」とビールをくいっと一飲みしたKさんが言う。
「ところで、なぜ5番が女性のSさんで6番が強打者のHさんなんだ。これもおかしいぞ。」とKさん。
「Hさんは変態なので、女性の後の方が燃えます。」と私。
会社の先輩方をたやすく変態呼ばわりしてよいのかという疑問は、一瞬たりとも頭をよぎらない。
「現代変態理論か。」とKさん。
「まぁ、そんなところです。」と私。
「俺も変態だから、その気持ちはよく分かる。」とKさん。
「分かってくれると思いました。」と私。
和民の個室で、明日の試合に向けてKさんと私の激論は終電間際まで続いた。




結局、ソフトボールは雨で中止となった。