別れの予感
自宅近く、経堂にある美容室に6年前から通っている。最初に行ったときに担当してくれた美容師さんのカットが気に入り、ずっとその人を指名してきた。
今日も、いつもと同じように「短く。」という素っ気無い希望を快く受け入れ、カットしてくれたのだが、いつにもまして丁寧なので、何となく不思議に思っていたら、帰り際に「退職するんです。」と言われた。
あまりにも急だったので、「ありがとうございました、お世話になりました」みたいな定型文を繰り返すだけになってしまった。ダメだ。ダメ過ぎる。はて、私はダメ州の州都の出身だったか。ああ、もっと話をしておけばよかった。カット中にメンズノンノを開いて買いもしない服を見てる場合ではなかった。
「いつも無口で雑誌ばかり読んで、とっつきにくい客ですいませんでした。適当な指示ばかり出してすいませんでした。6年間本当にお世話になりました。お疲れ様でした。」くらいのことを、さっと言えないものだろうか。
お別れのとき、伝えたいことの半分でも伝えられたことがこれまであったかなぁ。
今日は酒に走らず、音楽を聴いてやり過ごすことにする。ここ数年は、人を見送ってばかりだ。
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