隠れたメッセージ

大学の中で困っている女性のお手伝いをしたら、「おばあちゃんにもらったんだけど、今はダイエット中なので云々」と言い、彼女は箱に入ったチョコレートをくれた。断る理由も無いので受け取って、後輩に自慢気に見せたら、「ひょっとすると1ヶ月遅れのバレンタインチョコレートではありませんか」と言うのであった。「いや、そんなことはなかろう。だって、君、考えてみたまへ、たまたま通りすがっただけではないか。」と反論したのだが、「たまたまを装ったのですよ。きっと、手紙が含まれているはずです。箱をよくご覧になってください。」と、バレンタイン説をしきりに唱えるのであった。

あたかもスチュワーデスが気に入った男性乗客がいたときに、紙コップに自分の電話番号を書いて、飲み物を出す、という噂を信じてしまった哀れな男がコップの隅々をチェックするかのように、私はチョコレートの箱の隅々をチェックしたのだが、やはりどこにも何も書かれてはいなかった。

「やはり、これはただのお礼であって、バレンタインチョコレートではないのだよ。」とがっかりしながら後輩に言うと、「まだあきらめてはいけません。そこに貼ってあるシール。それがきっとメッセージの代わりなのですよ。」と言うのであった。「これは、ただの原材料表示ではないのかね。」と反論すると、「京都では、お茶漬けを出されたら帰れという意味になると聞くではないですか。婉曲な表現を好む人もいるのです。」と言うので、じっくりと読んでみた。

「じゃあ君、この、直射日光の当たる場所、高温多湿の場所を避けて云々、というのはどういう意味かね。」
「それは、私を守ってください、という意味ではないですか。」
「なるほど、では、この、国産、というのはどういう意味かね。」
「それは、日本出身です、という意味ではないですか。」
「なるほど、なるほど。では、この、お早めにお召し上がりください、というのはどういう意味かね。」
「それは、、、、、」

というような会話をしているから、いつまでたってもうだつが上がらないのだろうか。