飄然と江ノ島。

生しらす丼

朝になっても今日の予定が何も決まってない。
いかんではないか。

そこで、はたと気がついた。予定を決めようとするからいかんのであって、飄然とふらっと当て所なく歩き出してしまえばよいのではないかと。コペルニクス的転回とはこのことか。私は、鞄にカメラと文庫本を1冊入れて飄然と家を出発した。

駅に着く。切符を買わねばならない。切符を買うということは、すなわち目的地を決めなければならない。それでは飄然でなくなってしまう。困る。そこで、パスネットを買うことにした。これなら目的地を決めなくていい。飄然者の心強いパートナー、それはパスネット*1

小田急線の下りに揺られながら窓の外をぼんやり眺めていると、「かがやく理想、もえあがる夢」というスローガンを校舎に掲げる学校が目に入る。夢が炎上していて、消防車が放水している様子を想像した。

適当に電車を乗り換えていると、とうとう終着駅と思しき所にたどり着いた。片瀬江ノ島。なんだか人が多いが、そのまま戻るのも阿呆らしいので、改札を出ることにした。

人間というのは不思議なもので、電車に座っていただけなのに、腹が減ってしまった。江ノ島神社へと続く参道には、食事ができそうな店がいろいろとあって、どの店にも「本日、生しらすあります」と書いてある。本日、というところを見逃してはいけない。このメッセージに込められたるは、いつもあるとは限らないよ、今食べないと明日は食べられないかもしれないよ、これを食べないと後悔するよ、ということである。

なんたる親切。旅先では、人の優しさが身に沁みる。私は涙を流しながら店に駆け込んで、生しらす丼と生ビールを注文した。やっぱ、スローフードっていいよね。ちなみにこのしらす丼、1分で作れそうだけどそれは気にしないことにした。

*1:後ほど、一番安い切符を買って後で精算すればよいことに気がついた