日記

佐賀県を一人旅していたら友人カップルと出くわして、なんだかなぁと思いながら写真を撮っていたら大雨が降ってきて、宿へ行こうかなと地図を見たらとんでもなく遠い所にあることを知り愕然としたところで目が覚めた。

晴天が続いたせいで、雨が降ると外に出るのさえおっくうだ。15時過ぎてようやく体が動き出して、近所の喫茶店へ向かった。コーヒーを飲みながら、川端康成の「山の音」を読んだ。「これは素晴らしいから是非読んでください」と言いながら後輩が頼んでもいないのに持ってきた。他に女を作った息子の嫁をふびんに思うと同時に、女性として見てしまうような話。心象風景の描写が味わい深すぎて先に進めない。

隣に頼りない足取りのじいさんが座った。ぎこちない手つきで角砂糖をコーヒーに入れる。スプーンで丁寧にかきまわし、そっとカップを持ち上げて一口飲む。ちょっと本に集中していたら、じいさんは伝票の上に500円玉を乗せ、北欧の袋を抱え、ベレー帽をかぶってゆっくり店を出ていった。その一連の動きに、何とも言えない品があった。一方、自分はまだまだ身体を自由にコントロールできるというのに、どうも品が無いのはなぜか。老化によって脳の機能が多少衰えても品がなくならないところを見ると、脳だけのせいではないみたい。何でもかんでも脳だ脳だと、某知事は言うけれど。

千代田線の車内。ノートパソコンを開いて作業をしている。前にミニスカートの女が座る。女はやたらと足を組み替える。人生いたるところに試練が待ち受けている。

山の音 (新潮文庫)

山の音 (新潮文庫)