痛みに耐えて英会話

腹痛に顔を歪めて、駅のホームに立つ。とうとう風邪を患ったか。昨年の唯一の誇りは、風邪を患わなかったことだと言うのに。どうしたことか。だが試練はこれだけでは終わらなかった。「ドゥユースピークイングリッシュ?」と、年の頃二十八程度の米国人と思しき男性が話しかけてきたではないか。眉間に皺を寄せ俯き、腕を組み、最大限に調子悪そうなオーラを発していた筈であったが、国境の壁の厚さの前には無意味であった。

私も悪い人間ではない。ここで、邪険な対応をしたらどうなるか。もし彼の親がパウエルとかライスとかで、これを機に日本国に対する変な制裁が発動されたらどうするのか。ここは一つ、お国のためと「ア、ア、リト、リトル」と、腹痛を堪え声を振り絞る。私は制裁発動を阻止するため、代々木公園駅への行き方を丁寧に説明した。よし、これで私は明日にでも小泉首相から「痛みに耐えてよく頑張った!」と表彰されるのである。そして次の選挙戦でのチルドレン入りを要請される筈であるが、固辞する予定である。