お見舞い

研究室の留学生が左足の腱を切って入院したというので、お見舞いへ行くことにした。異国の地での入院生活はさぞかし心細かろうに。ひょっとすると、病室のベッドでめそめそと泣いておるかもしれぬ。こうしてはおれぬ。茶を啜り、どら焼きを食べてる場合ではない。一刻も早く行かなければ。

病室に着く。彼はノートパソコンでDVDを見ていた。思いのほか、元気そうであった。しかしこれは、私に心配をかけまいと、努めて元気に振舞っているのかもしれぬ。と思ったが、全ては杞憂だった。彼は既に母国の言葉をみんなに教えたりして、人気者になっていた。通りすがるナース全てに声をかけ、笑顔を振りまく彼。挙句の果てには、ナースに序列をつけていた。
「イマ、イチバンノヒトガトオリスギマシタ」
「アノヒトハ、サンバンデスガ、ヤサシイデス。カミヲアラッテクレマス。」

何だか男だらけの研究室にいるときより、生き生きとしている。もう少しで退院だと話す彼の横顔は寂しそうであった。まぁ、いざとなれば次は右足かな。