途方に暮れて、人生論

途方に暮れて、人生論

途方に暮れて、人生論

本屋に行けば、幸せになるためのヒント、仕事がうまく行く人の習慣、みたいな本が所狭しと並べられていて、当たり前のように、何でもポジティブに捉えなさい、楽観的になりなさい、のようなありがたいルールが書かれているわけだけど、結局そういうルールでは複雑な人生に対してはどうにもならないので、人は途方に暮れて本屋へ行き、装丁とタイトルの異なる似たような内容の本が出版されているのを発見し、それを購入してまた途方に暮れる。かく言う私も、そういう本を手に取るタイプの人間なのだが、ここ数年の本屋の様子を見ていると違和感を覚えてしょうがないのである。だから、むしろ生きにくさを感じながらも、人生のあやふやさやよるべなさから逃げずに、人生について考え続けるプロセスこそ重要なのだという氏の主張には大いに賛同するわけです。

あとがきより。

とにかく、今はおかしな時代なんだから生きにくいと感じない方がおかしい。生きにくいと感じている人間の方が本当は人間として幸福なはずで、その人たちがへこんでしまわないように、私は自分に似たその人たちのために書いた。

Web草思(保坂氏の連載が読めます)
町田康による書評