親父の好物。

墓参りの前に、祖父母の家に立ち寄ることになっていた。いつものように高井戸から首都高に入ろうとしたら、親父が珍しくそのまんま新宿まで行って小田急デパートに行ってくれ、と言うので、なぜ、と訊くと、かつサンドを買うから、と答えたのだった。お墓に備えるのかと思ってそれ以上訊かなかった。

祖父は一昨年に一時的に入院して以来、すっかり小さくなってしまって布団で横になっていた。食事もあまり摂らないらしく、ずいぶんと弱っているようだった。昼食の時間になって、祖父はかつサンドをほおばっていた。「あれ、おじいさんの好物なんだよ」と祖母が笑いながら私に告げた。それを見て、20年後くらい私は年老いた親父に好物を買っていこうと思ったのでした。ところで、親父の好物って何だったかしら。