給料日に思い出したこと

小学校6年生のときだった。塾帰りの南新宿駅で友人のK君が、こんな話をした。
「将来、頭で思ったことが瞬時に相手に伝わるようにな機械が開発されて、電話とかいらなくなるんだって」


私は、へぇーそうなんだ、と興味の無いそぶりをしつつ内心どきどきしていた。なぜなら私の父の勤める会社にとって電話代が収益源であり、電話がなくなれば失業間違いなしだからだ。そんなものが開発されては困ると、子供ながらに密かに心配してしまった(昔から心配性です)。とにかく早くお金を稼げるようにならねばなるまい、と思ったのだった。


ちなみにK君のパパは何かの社長さんであり、K君は高級住宅地の3階建ての家に住んでいる筋金入りの金持ちのボンボンであった。私のボンボンに対するイメージの悪さはこの頃の経験に基づくような気がする。


さて、幸か不幸か、テクノロジーの進歩はその域には達さず、父はまだ普通に会社に勤めており、私の早く稼がねば、という少年時代の純粋な気持ちはすっかり消え失せ、人より数年長く大学に引きこもり、今年の4月からようやく給料がもらえるようになった。今だったらいつ失業してもらっても構わないのですが、定年まであと少しだし、体に気をつけて勤め上げてほしいとあなたの息子は思っております、というここの気持ちはおそらく伝わってないでしょうよ。