ラーメンを食べるならラーメン通よりラーメン好きと一緒がいい。(翻訳家、鴻巣友季子)
今日の朝日新聞夕刊、文化面より。
ラーメンを食べるならラーメン通よりラーメン好きと一緒がいい。前者の薀蓄は疲れるが、後者は入店前からニコニコして麺への恋慕を語る。それだけでうまさ倍増である。
似たようなことを辛辣に書いているのが、日本で唯一女史という肩書きがしっくりくる塩野七生女史。「男たちへ」より引用。
解説屋の隆盛こそ、昨今の日本の非知的現象の最たるものである、とさえ思っているくらいだ。解説屋の仕事は、そのどこを斬っても、赤い血は出ない。(中略)
こうなると、同じ一行の書き文字も、同じ一句の話し言葉も、そこに凝縮された「力」が違ってくる。要するに、迫力が断じて違ってくる。だから、それを読む人や聴く者の胸に、訴えかけてくるものが強いのだ。
よく若いカップルが、ワタシのどこが好きなの、うーん優しいところかな、キャハハ、みたいな脳みその1グラムも使っていないような会話をしていることがあるが、好きだということを伝えるのに、えーあなたはこれこれこういう性格でして、故に惚れておるのだ、なんていうのは逆に嘘くさいと思うのです。よー解らんけど、好いとるもんは、しょうがなかろーもん、と博多弁でまくし立てられる方がよほど説得力があると思うのです。私もなんでこんな性格の人を好きになったのか今でもよく解せない人が2人ほどいました。昔ですけど。
本当に「好き」な気持ちが伝わる文章には、こうだから好きです、のような文は出てこないのです。その典型例、自他ともに認める呑んべえ、山同敦子氏の「愛と情熱の日本酒」のはじめにより。
ふわりと香る純米吟醸酒を冷やで一献。優しい米の旨味がゆっくりと広がり、するりと喉を滑る。余韻に漂う香りを楽しみながら、カラスミを一枚。ああ、極楽。てらてら光る鰤の照り焼きには、堂々とした体軀の熟成した純米酒を、ぬる燗で一杯。濃厚な旨さが弾け、口に残った鰤の脂をドシンと酸で断ち切る。うーん、幸せ。
というわけで、これからはこういう感じで「好き」を伝えていこうじゃありませんか。無謀か?
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